組織への疑問
入社すぐにITバブルが弾け、給与カットと所属部門の存続が危ぶまれる
1977年生まれ埼玉県出身。国内大手メーカーで働く父の元、幼い頃より技術や物づくりが隣合わせの環境で育ちました。
子どものころから物づくりが大好きだったこともあり、工業高等専門学校・大学院を経て、2003年に半導体試験装置をつくる会社に入社します。
しかし、ITバブルが弾けたことで、入社して1年目には給与の3%カットに加え、配属された部門は1年以内になくなることを知ります。自分の上司が次々と肩を叩かれるのを目の当たりにしました。
「企業って守ってくれない…」
「会社は信用できない…」
この頃から、「会社」「組織」というものに漠然と疑問を持ち始めました。
それから1年後、別の部門に異動できたものの、月に80時間〜100時間の残業は当たり前。帰宅は早くて21時、通常は23時24時に帰る生活を余儀なくされました。
そのころ、同期が過労で亡くなったことを知り、改めて組織に強く疑問を感じます。しかし、毎日の業務に追われる中、自分自身で精一杯で私はとにかく必死で仕事をこなしていたのです。
ドラムサークルとの出会い
「音楽の力を使えば組織は変わることができる!」と胸に抱き、チームビルディングの挑戦へ
自身のプロジェクトがひと段落した頃、もう1人同期が亡くなったことを知ります。
社内では過労で倒れる人も少なくなく、会社に対しての漠然とした疑問が、改めて浮上しました。自分の人生を真剣に考え始めたのもこの頃です。
「何かがおかしい…」
「自分が組織をどうにかしたい…」
いつしかそんな気持ちが芽生え、調べていくうちに、アメリカでチームビルディングとしてドラムサークルが活用されていることを知ります。
私自身、大学生の時に出会った和太鼓を社会人になってからも続けていたほど、音楽という非言語の力に助けられてきました。
400人を超えるイベントの立ち上げるなど、和太鼓を通して人と人とのつながりや地域のつながりの大切さを実感しながら、音楽の可能性や言語を超えたコミュニケーションを学んできていたのです。
そんな経験からも、新たに出会ったドラムサークルは、音楽の力を体感している私にとっては自然な出会いとも感じられ、すぐに入りました。
そして、
’’仲間が想いを一つにして、一つのゴールに向かって進んで行く’’
というドラムサークルの活動は、組織づくりへの考えに結びついたのです。
「これなら組織を変えることができるかもしれない」
そんな想いが募っていきました。
コーチングとの出会い
コーチングに出会ったことで言葉の大切さに気づく
組織を変えるためには、組織内コミュニケーションの改善が何よりも大切で、そのためには、’’まずは個人が自立的に動けることが必要だ’’と考えました。
「ドラムサークルを会社にも取り入れたい」
そう思ったものの、音楽という非言語の世界を会社の上層部に理解してもらうことは難しいものがありました。そんな時、ドラムサークルのファシリテーターを育成するプログラムにきていた人がコーチングをしていたことがきっかけで、コーチングに出会います。
ドラムサークルでも個人が自立していく力をつけるのは十分可能なのですが、音楽という非言語の世界を、組織へ落とし込む
難しさを痛感していてたため、
「言語を扱っていく必要がある」
と考えた私は、コーチングを学び始めました。
こうしてコーチングを学んだことによって、これまで
自分自身も普段の会話の中で言語を大事にしてこなかったこと
に気がつきます。改めて言語の大切さを実感した体験でもありました。
組織開発から現場教育へ
すべては’’共に’’、そして土台を作っていくことが何よりも大切だと知る
仕事に邁進する中、「組織を変えていきたい」という気持ちはより一層強く抱くようになりました。
そして、組織開発に関わるべく、社長直下の管理部門に自ら異動希望を出し、新たな挑戦に挑みます。
「上の立場にいけば自分のやりたいことができるのではないか?」
そう考えたものの、実際はそんな甘くありませんでした。
それでも組織変革に携わりたい気持ちは変わらず、現場の人に関わる部署に異動することになったのです。
ちょうど会社が統合されたタイミングでもあったため、現場の人たちをまとめる立場として、
学んできたコーチングのスキルを生かしながら、トップダウンの方法で現場と関わっていました。
ところが、現場の人たちをまとめるどころか、
本社と現場というフィールドの違いから、中々意思が伝わらず、苦労の日々が続きます。
ある日、統合前の会社ごとで現場の教育レベルが違うことに気づき、
日々使っている言葉を統一するなど、基本的なことから改善するする必要があると考えた私は、現場教育の方にシフトしていきました。
トップダウンで組織をまとめることよりも、
「現場の人と一緒にものづくりを良くしていこう」
と自らの考えも変わり、土台を作っていくことの大切さを痛感しました。
妻子との別れを経て自分の人生へ
苦しみを乗り越え、自分自身を大切にすることや、自らの’’言葉’’を使って人に伝えることの重要さに気づく
そんな中、プライベートでは家族との別れがありました。
2011年に起こった東日本大地震がきっかけで、妻との価値観の違いから、家族と別居することを選択せざる得ない状況に。
当時1歳に満たない娘とも再び1つ屋根の下で暮らすことはないのかと思うと、やるせない気持ちでいっぱいでした。その後も妻との考え方の不一致が重なり、最終的には離婚へ。
何よりも悔しかったのは、ドラムサークル初め、コーチングや職場の教育で培ってきた、人とのコミュニケーションの学びを、肝心な時に活かすことができなかったことです。
自分の想いが大事な人に伝わらないことへの悲しさと苦しさは計り知れないものでした。
その後、自分を受け入れること・認めること、そして自らの至らない点に向き合うのに時間はかかりましたが、その過程は自らの足元をしっかりと見つめる機会になりました。
「自分を大切にしていないと、相手も大切にすることができない。」
しばらくは、子どものためにも関係を修復することも考えたのですが、ようやく自分の中で折り合いがついたころ、自分のために人生を生きようと思うようになりました。
新卒から16年間続けた会社を退職することを決め、新たな道へ選んだ先は’’ライフプランナー’’という仕事でした。
人に関わる仕事がしたいという想いはずっと変わらなかったです。
保険という形のないものを売ることへの難しさを痛感したと同時に、
自分の自身の体験と紐づかない商品を提供することへの違和感を感じたことで、自分にとって、
’’自らの言葉’’を使って相手に伝えることの重要さに気がつきます。
’’自らの言葉’’とは、非言語の世界が広がっている。
なぜなら、その言葉の裏にある体験は言葉では表せないその人だけの世界だからです。
ちょうどその頃、自分の人生にとってかけがえのない出会いがありました。
その出会いとは、登山家の戸高雅史さんとの出会いです。
(※春秋社『生命力 ー 呼吸がつなぐ「こころ」と「からだ」』)
彼は、山という自然を通してひとりを探求してきた人であり、極限の世界でひとりで生き抜いた経験を持っていました。
そして現在は、自然を通して自立をサポートする活動をされています。
そんなマサさんの、自然という非言語の世界を通した’’自立’’へあり方は、自身の、非言語から出てくる言葉を通して自立を支援したいという気持ちを後押ししてくれたのです。
だからこそ、
「言葉に魂を宿らせることを大切にしたい。」
そして、
「組織・会社・社会で働く人たちに非言語の大切さを伝えていきたい。」
そんな自分の心に宿る願いに突き動かされるかのように、しばらく離れていたコーチングを本格的に再開し始めました。
人々が自立している世界を作りたい
誰かに認めてもらうのは一時的な安心感、自分が認めたことは’’継続力のある自信’’
現在コーチングをしている中で大切にしているのは、クライアントが
’’自立的に活動していけるようになる’’
ためのサポーターでいることです。最終的には、コーチがつかなくても良い状態が理想だと考えているからです。
そのためには、自分の求めているものを知らなければなりません。
自分自身で自分を認めること、言葉でしっかりと軸を定義することが必要
だと考えます。
そして、その言葉とは、
誰の言葉でもない’’自分の言葉’’であること
です。
個で立つということが最も大切な土台であり、個で立つというのは、
’’自分が自分を信頼している状態’’
とも言い換えられるでしょう。
自分が自分自身を信頼しているからこそ、他者のことも尊重できるし、他者の話も聴ける
のです。
そして、その
’’個で立つ土台を作っていく’’ために行っているのが、’’MyCompass’’
なのです。
自分自身の言葉で語られた大事な軸は、迷った時にいつでも立ちかえることができ、未来へとつながります。
その軸に沿って、「やりたいことに自分で進んでいけるようになった」
という報告を受ける時が、この活動をしていて本当に嬉しい瞬間です。
今私が望んでいる世界とは、
’’人々が自立している世界’’
です。
自分が何を大事にしていて・どんな行動指針を持っているのか、そしてその軸があるからこそ仲間と深く繋がることができます。
’’MyCompass’’のサービスでは、人生の中で1日、じっくりと今までの自分の歩んできた足跡をしっかり見つめ、認めていくことを大切にしています。
まずは土台として自分を認めることが何よりも重要だからです。自分の生きる軸があれば、すべてはつながってくる。だからこそ、この’’MyCompass’’を多くの人に届けたいと思っています。
【私のMY COMPASS】