目次

システム思考の基本原則とは

 

『この視点から見てごらんなさい。ほら、見て。大事なことは何ですか?』         (「学習する組織」第18章より)

 

宇宙飛行士のラスティ・シュワイカートの任務を表現した言葉です。この言葉は、私の人生のバイブルである “学習する組織”の “第18章 「分かたれることのない全体」”に書かれた一文。この本と私が出会い、最終章で、この世界観に触れたとき、今まで私が見ていた世界がどれだけ狭かったのか、どれだけ偏ったメガネで見ていたのか、考えさせられた。このラスティの言葉には、本人も述べている通り、『システム思考』の基本原則を理解するためのヒントが詰まっている。ただし、私は宇宙から自分の目で地球をみたことはない。よって、私なりにこのラスティの言葉を読んで感じたことを綴っていく。

 

書籍『学習する組織』との出会い

 

私は小さい頃から『宇宙への憧れ』を持っていた。それは幼心に空を見上げながら思っていた。それは、

 

『宇宙の果てはどこにあるのだろうか?』

 

この問いの好奇心は、外へ外へと未知の世界へ向かっている。その先にある無限の世界への好奇心である。それは今でも尽きていない。いつか『宇宙の果て』を知りたいと思っている。人生を全うする中でいつか『宇宙の果て』を知ることができる日を夢見みている。

 

私の好奇心は、幼い頃から外へ外へと向いていた。しかし、いつからか、外から内へ、好奇心の向きが変わっていった。

 

『好奇心の向きが変わったのはいつだったのだろう?』

 

それは、私がエンジニアとして働き始めてまもない頃、ITバブルが弾けた名残がまだあり、毎日、深夜まで働き、早朝から出勤する日々を過ごしていた時期だ。その頃は、長時間働いていることが美徳であったようにも思う。そんな日々が続き、そんな純粋な好奇心すら持てず、熟さなければならない業務に忙殺されていた。そんなある日、同期の一人の訃報を聞く、そのときは自分自身も日々の業務に追われ、私自身、余裕がなく何とも思わなかった。それから、数年後、また悲しい知らせが届いた。そんな時に何か自分の心の中のスイッチの音が“パチン”と入った音を聞いた。

 

『働いているこの場所は何かがおかしい?』

 

その同期と直接、業務をしていたわけではない、端から見れば、同じ組織の中で働いていただけとも言える。ただ、同じ場所で働いていた仲間に対して、何もできなかった自分へのイライラなのか、怒りなのか、悲しさなのか、そんな感情が生まれてきたのだ。

そして、私の中にこんな問いが浮かんできた。

 

『私は、この場所でどうしていきたいのか?何ができるのか?』

 

それから貪るように本を読み始めた。そんな中で、外へ外へと向いていた好奇心が、内へ内へと変化して行った。その好奇心が向かった先とは

 

『人とは何か、組織とは何なのか?』

『どうしたら、人は強くなれるのだろうか?』

『どうしたら、悲しいことが起こらない組織にできるのだろうか?』

 

こんなことを考えるようになっていた。その答えを見つけるためにドラムサークルコーチングを学び始めた。それから、時間が過ぎたある日、『学習する組織』という本に出会うのである。

※ドラムサークルとは、「ファシリテーター」という案内役のガイドにより行われる。最大の特徴は、参加者は「ドラムを習うため」ではなく、「楽しむため」、または「体験するため」に参加すること。ファシリテーターは、「in the moment (Arthur Hull)/いま、ここ」の音楽を演奏するよう参加者を促し、参加者の間の「つながり」や「コミュニケーション」を強化する。(※wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/ドラムサークル)

※コーチングとは、促進的アプローチ、指導的アプローチで、クライアントの学習や成長、変化を促し、相手の潜在能力を解放させ、最大限に力を発揮させること目指す能力開発法・育成方法論、クライアントを支援するための相談(コンサルテーション)の一形態。(wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/コーチング

<書籍紹介>

○ 漫画でやさしくわかる学習する組織

○「学習する組織」入門

○ 学習する組織

 

 

点と点が結ばれ、線になる

 

『学習する組織』との出会いは、とても衝撃だった。ちょうどこの頃、生産現場の改善のために活用していた品質管理。それらを学ぶ中でその奥深さに触れていた。本を開き読み始めた。すると、数ページも立たずに、その品質管理のパイオニアとして世界中で尊敬されているW・エドワード・デミング博士の推薦文が目に入ってきたのである。

 

“私たちのマネジメントの一般的体系は職場の人たちを破壊してきた。人は生まれながらにして、内発的動機付け、自尊心、尊厳、学びたいという好奇心、学ぶことの喜びを備えているものだ。              (『学習する組織』p22より)”

 

また、この言葉は、この本と出会う前に、私の目の前に起きた悲しい出来事と、それを解決するために大切な、人の尊重するべき要素が書かれていたのだ。これは何か自分の内側で大切にしてきた点と点が結ばれ、線になったような瞬間だった。

それから、線と線を結び、面にし、立体にするべく、貪るように毎日、読み始めた。

 

偏った眼鏡が一瞬で壊され、世界の見方が変わる

 

読み進めていけばいくほど、人や組織を捉えることの難しさや、逆に面白さに目覚めていった。そんなとき、ふと物事を見るときに問いが浮かぶようになる。

 

『私はどんな視点で物事を見ているのか?感じているのか?視点が狭まりすぎていないか?』

 

仕事をする上でも、日常の中でもこんなことを考えるようになっていった。そんな日々を過ごしながら、本を読み進めていたある日、『学習する組織』の最終章へ行き着くのである。

そして、冒頭のラスティの問いが目に入ってきたのである。

 

『この視点から見てごらんなさい。ほら、見て。大事なことは何ですか?』        (「学習する組織」第18章)

 

そして、この文章はこう続いていく。

 

月へ行きます。そして、今度は彼が振り返って地球を見るわけです。でも彼は、地球を「美しい細部まで見える何か」としてではなく、「あそこにある小さなもの」として見ます。・・・(省略)・・・その大きさといい、その意義といい、地球はどちらにもなります。とても小さくてとてももろいものにもなるし、親指で隠してしまえるくらいの、宇宙の中の非常に小さな点にもなるのです。

(「学習する組織」第18章)

 

ラスティのように実際に宇宙に行って、肉眼で見ることは、私には叶いません。もしかしたら、将来生きている間に宇宙旅行ができるようになるかもしれません。

ただ、宇宙飛行士やそれを支える技術者や様々な人たちの力によって映像や写真で見ることができるようになった。さらには、今や技術の発達によって宇宙からの映像をLIVEで見られるようにもなっている。驚くことである。ラスティの時代には、宇宙飛行士になるような限られた人にしか見ることのできなかった景色を、世界中の人が見て、一片を感じることができるのである。

国際宇宙ステーション(International Space Station)からのライブでの地球映像は

さらに文章は、こう続く。

 

その小さな青と白のものが、あなたにとって大事なすべてであることに気づきます。歴史や音楽のすべて、詩や芸術、戦争、死と生、愛、涙、喜び、ゲーム、このすべてが親指で隠すことができる・・・(省略)・・・地球がガラス鉢のような存在なのだということを理解しています。そして、境界線はありません。枠組みもないし、境界線もないのです。      (「学習する組織」第18章)

 

私が、日々どれだけ偏った見方、一部しか見ることができていなかったのかを突きつけられた。この視点まで視野を広げることを知ると、物事の見方が一瞬で変わる。ラスティのように実際に宇宙に行くことはできなくても、宇宙の画像や写真をみて、想像することはできるのだ。

ラスティの印象的な言葉がある。それは、

 

自分たち宇宙飛行士は「人類の感覚器官が広がったことを象徴している」と気づいたのだ       (「学習する組織」第18章)

 

この言葉は、ぐさりと私の心に刺さった。少しでもその感覚を広げられるように努力していこうと決めた。それは、この本と出会う前に私の中に浮かんだ問い

 

『人とは何か、組織とは何なのか?』

『どうしたら、人は強くなれるのだろうか?』

『どうしたら、悲しいことが起こらない組織にできるのだろうか?』

 

これらの問いに何か答えを導くきっかけを与えてくれたのだ。

そして、最後はこう締め括られていた。

 

地球は分かたれることのない全体であり、それは私たち一人ひとりが分かたれることのない全体であるのと同じである。私たちも含めた自然は、全体の中にある部分で出来上がっているわけではない。全体の中の全体でできているのだ。すべての境界線は、国境も含めて、基本的に恣意的なものである。私たちが作り出し、そして、皮肉なことに、自分たちがそれにとらわれて身動きがとれなくなっているのだ。                                       (「学習する組織」第18章)

 

これは、私達が境界線を作り出すこともできれば、取り払うこともできることを意味している。私も今まで人生の中で、境界線や枠組みに嵌められ、苦しんだことが沢山あった。本当は、自分自身で境界線を作り、枠組みに嵌めていたのかもしれない。でも、この考え方に出会ったとき、私が選択し、見方を変えれば何事も自由に捉え直すことができることに気がついた。これは、私にとって大きな転換点であり、パラダイムシフトが起こった瞬間である。

 

皆さんにもぜひ、このラスティの言葉から何かを受け取り、『システム思考』に興味を持っていただけたら嬉しい。

 

言葉は一つの枠組みであり、境界をつくる

 

私は、日々、葛藤する中で

『どうしたら、人は強くなれるのだろうか?』

その問いの答えを提供するものの一つとして、My Compassというセッションをお届けしている。

その中で、言葉の難しさを感じることもあれば、可能性を感じることもたくさんある。今回、ご紹介した宇宙飛行士のラスティの言葉には、その可能性を多いに感じることができる。

ラスティは、誰も経験したことがないことを、自分の言葉で表現することを探求し続けてきた。その結果、この言葉には、多くの人に届くメッセージが込められている。さらには、なぜラスティが宇宙飛行士を目指していたのかも感じ取れるのではないだろうか?その言葉には力強さがある。

言葉は、コミュニケーションを阻害することもあれば、つながりを促進し、自由、さらには、力を与えてくれる。それを選択するのは、あなた次第である。そんな時、この『システム思考』という考え方を持っているだけで、立ち止まり、世界を広げ、自由に考える手助けをしてくれると思っている。

今までに、お話を聞かせて頂いた皆さんの世界は、誰一人として、同じ人はいなかった。その人が経験した世界を一緒に旅することは何よりの喜びであり、その旅を一緒に言葉で表現できた喜びは何事にも変えがたいものである。それは、ラスティの言葉を聞いたような感覚である。

いつか、これから出会う皆さんと人生の旅をできることを楽しみにしています。

まとめ

『システム思考』を知ることは世界の見方が変わり、あなた自身の見方も変わると考えている。それは、言葉の定義に縛られることがなくなり、あなただけの言葉で、あなたの物語を語れるようになる。それは、自信につながり、この景気も自然や住んでいる環境が大きく変化の真っ只中にいる中で、大切なことになる。ぜひ、一度皆さんも『学習する組織』を手に取って読んでみてください。